『とりつくしま』
死んだあなたに、「とりつくしま係」が問いかける。この世に未練はありませんか。あるなら、なにかモノになって戻ることができますよ、と。
そうして母は息子のロージンバッグに、娘は母の補聴器に、夫は妻の日記帳になった・・・・。
すでに失われた人生が凝縮してフラッシュバックのように現れ、切なさと温かさと哀しみ、そして少しのおかしみが染み出る、珠玉の短篇小説集。 「裏表紙より」
著者:東 直子
出版:ちくま文庫
こんにちは!たらです。
今日のおすすめ本は「とりつくしま」です。
読みながらも、読み終えてからも、死んだら何にとりつこうか?真剣に考えてしまいました。
あなたなら戻れる先にどんなモノを選ぶでしょうか?
とりつくしま 著者:東 直子
著:東 直子
1963年生まれ。歌人、小説家、脚本家。
主な著書
・新潮社
『薬屋のタバサ』
・角川文庫
『晴れ女の耳』
・ちくま文庫
『回転ドアは、順番に 』
・講談社文庫
『さようなら窓』
・集英社文庫
『水銀灯が消えるまで』
・PHP文芸文庫
『いつか来た町』
など。
死んだ後モノにとりつけるとしたらあなたは何を選びますか?
死んだ後に「この世に未練はありませんか?」「あるなら、なにかモノになって戻ることができますよ、」なんて言われたら
みなさんは一体どんなモノになりたいですか? 一体どんなモノを選びますか?
そんな事在り得ないからそんなの考えても無駄だよ。なーんて思いますか?
正直言うと、私は裏表紙を読んだ時、面白そうな小説だなとは思いましたが、
まさか、まさか、自分が読書中も、そして読書後も
死んだ後にとりつくモノについてこんなにも真剣に考えるとは思いもしませんでした(笑)
読めば誰しもがそうなってしまう
とりつくしま係の問いに思い思いの品にとりつく十人十色の物語。
10人の主人公の選択を通して見えてくる生と死
「モノになってこの世をもう一度体験できますよ」
この世に未練を残したまま生涯を終える事になってしまった主人公達の前に現れる「とりつくしま係」
各々は大切な人のそばにあるモノとしてこの世に戻っていきます。
それは野球のロージンバッグ(滑り止めに使う白い粉が入った袋)だったり、マグカップだったり、日記帳だったり。
ほっこり感じるお話もあれば、亡くなっても尚切ないという感情から逃れない恐怖や
断ち切れない人間という生き物の欲の深さも感じずにはいれませんでした。
その証拠に、1話目のお話を読み始めた時と、10話目を読み終えた時とでは、
とりつきたいと思い描いたモノが全く違うはずです。
誰かが亡くなる時、残された側は悲しくて、切なくて、居たたまれない気持ちになりますが
だけど、亡くなった側はどうなのでしょう?
そんな世界をとりついたモノ目線で語られるのも斬新で新鮮です。
1話目で母親は息子のそばでもう少しだけ見守ってあげたいと野球のロージンバッグをとりつく先に希望します。
この時点では、浅はかな私は、在り得ないー!!安易すぎる!!
そんな消えちゃうような消耗品に・・・と思っていたんですけどね。
読み重ねていくうちに、私にとっては1話目のお母さんの選択を安易と思った自分の浅はかさを恥じました。
1つ1つ読み重ねるうち、とりつきたいと考えるものは変化していきます。
そして、私自身の出した最終決断は何にもとりつかない【成仏希望】でした。
大切な人のそばに戻りたいと思うだろうけれど、次のサヨナラが耐えられない気がするからです。
それは私にとっては、はじめのお別れより辛いものになるのではないかと。
【未練は残さぬように生きよう。】
もしも突然亡くなる事があった時、大好きな家族や友人や恩人に言い残し、やり残しがないように
【日々感謝を伝える努力をしよう。】と、
生きている今の大切さを気づかせてくれました。
感想はきっと人それぞれで、母親目線で読むのか?子供目線で読むのか?や
今の置かれてる状況によって捉え方はみなさん違ってくる物語です。
今のあなたが読んで感じる気持ちと、5年後のあなたが読んで感じる気持ちは
全く違うものになるかもしれません。
そばに置いてたまに読み返してみたい1冊です。
エピローグ:あなたを大切に思う誰かがとりついているかもしれない
そしてこのお話は
自分の身の周りにあるものにも魂が宿っているかもしれない!と、
モノをもっと大切にしようと思える物語でもあります。
私は読みながら今は亡き父を思いました。
心配性の父が何かにとりついてるかもしれないな、と。^^
もしかしたらこのコップかもしれないし、PCか?それか電気スタンドに??
あなたにもあなたを大事に思う誰かが今もそばで応援してくれてるかもしれませんよ!!
たら
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